名字の由来、語源、分布

日本姓氏語源辞典
世界各国姓事情

インド

自称 भारत गणराज्य(Bhārata Gaṇarājya, ヒンディー語)  英語名 Republic of India
人口 1,324,171,354人(2016年)
姓数 1,704,541個以上。Forebears による1人の姓の順位(2014年)。

特徴

インドでは「個人名+副名+姓」あるいは「個人名+中間名+副名+姓」が基本で、副名は、家族名、神名、父名など多様である。また、イギリスによる統治時代に便宜のため短縮化した姓がある。

Bandopadhyay→Banerji
Mukhopadhyay→Mukherji

現在では、個人名のみといった例や一人で四つの個人名といった例はまれである。北部インドの農村部では、結婚後の女性は夫の姓を取り、子供は父の姓を引き継ぐ。 ただし、現代の都市部では、この習慣が消えつつある。ヒンドゥー教徒は、姓からカーストや出身地まで分かることがある。

カーストごとの姓

バラモン Iyenger, Iyer, Motowani, Namboodripad
クシャトリア Melwa, Menon, Nayar
バイシャ Ananda
スードラ Reddy
Rao という称号は、どのカーストの者でもありうる。

姓の接辞の例

接辞 意味 起源・多い地域
-aiya カルナータカ
-am
-an タミルナドゥ
-ani イラン系民族
-appa カルナータカ
-arji バラモン
-erji バラモン
-da-sa 「しもべ」 スードラ
-datta 「贈り物」 バイシャ
-deva 「神」 バラモン
-guputa 「秘密」 バイシャ
-i イラン系民族
-jee ウェストベンガル
-kar マハラシュトラ
Nath- 「統治者」
-ni イラン系民族
Prasad- 「(神への)贈り物」
Raj- 「王」
Reddy- カルナータカ
-sen スードラ
-sena 「軍」、「兵器」
-simha 「獅子」
-swamy 「聖者」、「主人」 タミルナドゥ
-than タミルナドゥ
-varma 「保護」クシャトリア
-chand 「愉快な」

姓の起源の種類
■ 故地名 
祖先の出身地の名で、大半のインド人は、故地名が家族名である。
■ 職業名 
グジャラートやムンバイに多いパールシー(イラン出身で約10万人)は、職業名に「~する人」、「~屋」の意味である -wala を付けて家族名としている。その時点の職業に応じて改姓することが行うものの職業は世襲であることが多いため姓を何世代にもわたり保持する。
■ 氏族名 
国内各地に点在して少ない。Chota Nagpur 人は、それぞれの人が親族関係を持つと考える動物の神格がいてその名が氏族名として用いる。また南インドの Kodava 人も氏族名を用いる。

宗教別の姓名
■ ヒンドゥー教
典型的なヒンドゥー教徒の名前は「個人名+中間名(父名など)+副名(家族名など)」からなる。

■ キリスト教
イ ンドのキリスト教徒の名前は、過去2世紀の経過を経てインドの命名法と西欧の命名法とが独特な形で融合したものであり、「父の個人名+個人名+姓」という順が多い。シリア系キリスト教徒の家族名は、多くの場合ヘブライ語あるいはギリシア語起源の名がマラヤーラム語に入ったものである。数世代前の父祖の個人名であるため世代間で変化することなく家族固有の名となる。その他には、特にシリア系キリスト教徒は、先祖の出身地を個人名の後に置くという方式を採る。

■ シーク教
シーク教の第10代の指導者が、シーク教徒の男性は名前に Singh 「獅子」、女性は名前に Kaur 「姫」を使用しなければならないとしたため普通は中間名として氏族名の前に置いて用いる。氏族名を用いない場合もあり、その場合 Singh は唯一の副名となる。その他、個人名や家族名の最後に -Singh を付加することやSingh の後に異なった姓を使用するのも一般的であり、その場合 Singh か Kaur を中間名として使用する。
具体例
Montek Singh Ahluwalia
Surinder Kaur Badal

■ 
ジャイナ教徒 
副名に Jain を用いることがよくある。ただし、上級クシャトリヤの Thakur や Rajput のカーストに属する人々を中心にヒンドゥー教徒も副名として Jain を用いる。

地域別のインドの姓
インド北部(パンジャブ、ハリアナ、ウッタランチャル、ヒマーチャルプラデシュ、ジャンムカシミール、デリー)
「個人名+姓」の順で、姓は職業、聖職者に由来するものがある。18世紀以降は、姓として英語の職業名を使用する場合もある。

Engineer 「技術者」
Builder 「建設業者」

パンジャブ語を使用するパンジャブでは、シーク教徒が多く前述の「獅子」の意の singh は、北インドではヒンドゥー教徒によっても用いられる。

インド北部の一般的な姓
姓 多い地域
Arora
Bhatnagar
Chopra パンジャブ
Gill パンジャブ
Gupta
Kapoor パンジャブ
Kapur パンジャブ
Kapur
Kaul カシミール
Khan パシュトゥーン起源
Khanna
Malhotra
Malik
Mehra パンジャブ
Mishra
Mistry
Nayyar パンジャブ
Pareek
Rawat
Sarin
Saxena
Sharma
Singh 北インド
Tandon
Verma
Watal カシミール

インド中央部(ビハール、ウッタルプラデシュ、マッディアプラデシュ)
ヒンディー語を中心に使用する地域であり、インド北部に類似している。

インド中央部の一般的な姓

姓 多い地域
Agrawal マッディアプラデシュ、ウッタルプラデシュ
Agarwal マッディアプラデシュ、ウッタルプラデシュ
Aggarwal マッディアプラデシュ、ウッタルプラデシュ
Bhatnagar ウッタルプラデシュ、ビハール
Chauhan マッディアプラデシュ、西部のラジャスタン
Jha ビハール北部
Khan
Mistry
Saxena ウッタルプラデシュ、ビハール
Sharma ウッタルプラデシュ、北インド全体
Singh
Verma ビハール、ウッタルプラデシュ
Yadav ウッタルプラデシュ、ビハール

インド西部(マハラシュトラ、グジャラート、ラジャスタン、ゴア)
■ ゴア
ポルトガルの植民地だったことからポルトガル系の姓がある。また、カトリック教徒は先祖の姓と結合させた姓を持つ。

Miranda-Prabh
Pereira-Shenoy

■ マハラシュトラ(マラーティ語)
「個人名+父の個人名+姓」の順で、公文書には最初に姓を記載する。姓は、故地名に -kar を付けた者が多い。また、祖先の学問的功績に由来する姓がヒンドゥー教徒にある。

■ グジャラート(グジャラート語)
「個人名+父の個人名+姓」の構成が順がほとんどで、父の個人名は略されて頭文字で表記されることが多い。姓の接辞に多い -ani, -i, -ni は、イラン系民族の子孫を意味する。また、結婚後の女性は夫の名を中間名として用いて姓も夫のものに変える。

インド西部の一般的な姓

姓 多い地域
Chavan
D'Costa ゴア
D'souza ゴア
Gavde
Kadam
Lobo ゴア
Mehta グジャラート、パンジャブ
Patel グジャーラート
Patil マハラシュトラでの語形
Pawar
Powar
Rodrigues ゴア
Shah グジャラート
Tambe

インド東部(ウェストベンガル、オリッサほか)
■ ウェストベンガル州(ベンガル語)
ウェストベンガル州では -jee で終わる姓が多い。また、ヒンドゥー教徒は、公式文書に記載されない綽名を個人名と副名の他に持つのが一般的である。

インド東部の一般的な姓
姓 多い地域
Banerjee
Bandopadhyay
Bose
Chatterjee
Chatterji
Chattopadhayay
Das
Dasgupta
Ghosh
Mahapatra オリッサ
Mitra
Mohanty
Mukherji
Mukopadhyay
Patra
Pattnaik
Sarma
Sarmah Sharma の異形
Sengupta

インド北東部(アッサム、トリプラ、ナガランド、メガラヤ、アルナチャルプラデシュ、シッキム)
ナガランド、ミゾラムにチベット・ビルマ語派の民族がおり、他の地域と異なる。

インド北東部の一般的な姓
姓 多い地域
Bhutia シッキム
Lyndem メガラヤ
Thapa シッキム(ネパールにも多い)

インド南部(アンドラプラデシュ、カルナータカ、タミルナドゥ、ケーララ)
■ アンドラプラデーシュ(テルグ語)
「姓+個人名+カースト名」が基本でカースト名は省略することが多い。姓は、故地名であることがほとんどで、職業名を用いる場合もある。Velanati や Telaganya は、祖先の出身地による家族名である。近年ではカースト名の代わりに称号を用いることが流行している。

■ カルナータカ(カンナダ語)
「故地名+父の個人名+姓/カースト名/称号」が典型的で、故地名を持たない場合「個人名+父の個人名」となる。接辞は、Reddy-, -appa, -aiya が多い。

■ ケララ(マラヤーラム語)
タミルナドゥに類似している。キリスト教徒の間では、洗礼名を中間名として持つことが一般的である。この場合洗礼名は、祖父母あるいは教父母の個人名である。中間 名は略されて、頭文字で表記されることが多い。伝統的に、女性は夫の個人名を中間名として用い、父の家族名も夫の家族名に変える。

■ タミルナドゥ(タミル語)
普通は個人名しかなく混乱を防ぐため父親の個人名の頭文字を名前の一部として用いる。また、父親の個人名を副名として用いる慣習があり、ある世代の個人名が次の世代の副名になる。一部のタミル人は、外来の方式の「姓+個人名+カースト名」の順としており、故地名(姓)とカースト名の両方を名前の一部として用いることがある。ただし、カーストは重視しない傾向がある。また、姓は -an, -am, -than, -swamy で終わるものが多い。現在は、父親の個人名あるいは夫の個人名が副名として用いて姓とみなすようになっている。

インド南部の一般的な姓
姓 多い地域
Balasubramaniam
Jayaraman
Menon ケララ
Nair ケララ
Pillai
Rai カルナータカ
Rangan
Rangarajan
Rao カルナータカ、ケーララ(中部のマハラシュトラにも多い)
Shetty カルナータカ
Subramaniam
Uthappa
Venkatesan

地域別の一般的な姓の出典
http://en. wikipedia. org/wiki/List_of_most_common_surnames#India

インドの姓ランキング(2014年)
順位 姓 人口 語源
1 Devi 70,362,196
2 Singh 34,837,930 「獅子」。
3 Kumar 31,111,143 「息子」、「王子」。
4 Das 11,368,662 ヒンディー語、ベンガル語。「召使」。
5 Kaur 9,480,181 「王女」。
6 Ram 7,228,537
7 Yadav 6,993,385
8 Kumari 6,615,133
9 Lal 5,669,656  「最愛の(原義はおだてる)」。
10 Bai 5,339,640
11 Khatun 5,276,478
12 Mandal 5,167,955
13 Ali 5,119,003
14 Sharma 5,025,029  「喜び」。バラモン。
15 Ray 4,740,426
16 Mondal 4,655,061
17 Khan 4,569,384 「王」、「可汗」。
18 Sah 4,551,187
19 Patel 4,215,907
20 Prasad 3,934,519
21 Patil 3,680,446
22 Ghosh 3,640,320
23 Pal 2,968,625
24 Sahu 2,841,120
25 Gupta 2,835,985 「守る(原義は牛を守る)」ジャイナ教。
26 Shaikh 2,814,124
27 Bibi 2,770,959
28 Sekh 2,367,443
29 Begam 2,345,922
30 Biswas 2,256,421
31 Sarkar 2,247,085
32 Paramar 2,246,676
33 Khatoon 2,203,389
34 Mahto 2,174,466
35 Ansari 2,096,249
36 Nayak 2,078,517
37 Ma 2,068,565
38 Rathod 2,054,796
39 Jadhav 2,054,724
40 Mahato 2,003,792
41 Rani 1,998,513
42 Barman 1,961,454
43 Behera 1,948,478
44 Mishra 1,917,072
45 Chand 1,915,675
46 Roy 1,914,359
47 Begum 1,907,672
48 Saha 1,879,505
49 Paswan 1,843,564
50 Thakur 1,815,964
51 Thakor 1,646,906
52 Ahamad 1,626,496
53 Chauhan 1,592,334
54 Pawar 1,578,907
55 Majhi 1,571,236
56 Bano 1,563,846
57 Naik 1,535,388
58 Pradhan 1,493,787
59 Alam 1,398,756
60 Shinde 1,350,189
61 Malik 1,334,780
62 Sardar 1,251,180
63 Nath 1,221,580
64 Raut 1,201,389
65 Bauri 1,146,353
66 Shaik 1,117,580
67 Chandra 1,117,493
68 Patra 1,114,828
69 Jha 1,112,929
70 Murmu 1,099,550
71 Solanki 1,081,015
72 Cauhan 1,043,182
73 Shah 1,039,807
74 Prakash 1,036,851
75 Sinh 1,025,018
76 Pandey 1,021,392
77 Patal 1,002,362
78 Munda 996,602
79 Dutta 993,810
80 Chaudhari 973,421
81 Raj 965,679
82 Pandit 965,304
83 Jain 944,116 「 ジャイナ教」
84 Kamble 941,077
85 Manjhi 938,573
86 Rana 935,591
87 Molla 904,574
88 Chaudhary 896,002
89 Makavan 890,167
90 Jena 890,023
91 Chakraborty 881,382
92 Hussain 869,403
93 Pathan 859,148
94 Gayakwad 817,151
95 Nisha 811,778
96 Vasav 793,673
97 Debnath 780,243
98 Rai 778,769
99 More 762,380
100 Varma 761,715

出典
http://forebears. co. uk/india#surnames

参考
『世界の言語ガイドブック2 アジア・アフリカ地域』(東京外国語大学語学研究所編、三省堂、1998)
インド人の名前
https://ja.wikipedia.org/wiki/インド人の名前