名字の由来、語源、分布

日本姓氏語源辞典
世界各国姓事情

モンゴル国

自称 Монгол Улс(Mongol Uls, モンゴル語)  英語名 Mongolia
人口 3,042,511人(2015年)
姓数 ごくわずか。Forebears による1人の姓の順位(2014年)からでは2,024個以上。

特徴
「姓(オボグ(父の個人名に属格語尾をつけたもの))+個人名(ネル)」の順であり、『産経新聞 1999年2月24日号』では1999年3月より姓の使用を再開するとしている。

『名前と社会 名づけの家族史』(上野和男、早稲田大学出版部、1999)によれば、1921年に革命後に氏族のリーダーへの忠誠を弱めるために姓を禁止した。その後『モンゴルにおける姓復活の試み』(岡洋樹(『月刊しにか』2000年5月号))によると家族法を整備して消失した姓を再び命名しようとしている。

また、姓と似た概念として本人の個人名の前に父の個人名を置く。これは、ロシアの影響で父称(etsgiin ner)と呼称する。この父称を子孫が固定したものが姓ということにもなる。


■ 朝青龍明徳の本名のドルゴルスレン・ダグワドルジ(Dolgorsürengiin Dagvadorj)。
ダグワドルジが本人の名、ドルゴルスレンが父の名。
■ Tsakhia が、息子に Elbegdorj と名付ける場合の息子のフルネーム。
Tsakhia Elbegdorj

所有格(例 Tsakhia“giin” Elbegdorj)で父称を与えることは頻繁にある。もし、父が不明の場合は、母の名を使用する。しかしながら、これらは日常で使用することは少ない。

姓には、一族名(ovog)を使用することもあり、一族名は父称と個人名の前に付属する。

Besud Tsakhiagiin Elbegdorj
Besud が一族名。

これらの一族名は重要な意味を持たないものでパスポートには記載しない。

一族名の例
Borjigin チンギス・ハンの氏族名。チンギス・ハンにあやかって全国で姓とする者が続出した。
Besud
Jalair
keleid チンギス・ハンの姻族。

ヤマートは「ヤギを持つ者」の意。ヤギが貧乏の象徴であることから自分がヤマート姓であると知っていても牧民は用いたがらない。
『モンゴルにおける姓復活の試み』(岡洋樹(『月刊しにか』2000年5月号))

男の個人名で使用する語の例
個人名には、縁起の良い言葉や仏教に由来する言葉を使用する。
ゾリグ 「勇気」
ボルド 「鋼鉄」
バータル 「英雄」

女性の個人名で使用する語の例
ツェツェグ 「花」
オヨン 「知性」(男性の名前の構成要素としてもある。ただし、一語の場合は女性)

邪視をさけるための個人名の例
ネルグイ 「名無し」
ビービシ 「私じゃない」
バースト 「糞くっつけた」

モンゴル人の人名の接辞
adiyaa 「太陽」。サンスクリット語。 
angarak 「火星」。サンスクリット語。
baasan 「金星」。チベット語。
badma 「蓮」。サンスクリット語。
barhasbadi 「木星」。サンスクリット語。
bud 「水星」。サンスクリット語。
byamba 「土星」。チベット語。
dabaa 「月」。チベット語。
dagba 「清い」。チベット語。
damba 「聖なる」。チベット語。
damdin 「馬頭観音」。チベット語。
dash 「幸福」。チベット語。
dorj 「金剛」。チベット語。
erdene 「宝物」。サンスクリット語。
garma 「業」。サンスクリット語。
gombo 「庇護者」。チベット語。
ishi 「賢明な」。チベット語。
jab 「庇護」。チベット語。
janchib 「神聖」。チベット語。
lhagba 「水星」。チベット語。
lobsan 「よい気持ち」。チベット語。
lodoi 「知性」。チベット語。
myagmar 「火星」。チベット語。
natsag 「すべての」。チベット語。
nyam 「太陽」。チベット語。
ochir 「金剛」。サンスクリット語。
pontsag 「完璧」。チベット語。
pureb 「木星」。チベット語。
samboo 「良い」。チベット語。
samdan 「瞑想」。チベット語。
san 「善良な」。チベット語。
sanchir 「土星」。サンスクリット語。
senge 「獅子」。チベット語。
sodnom 「幸福な」。チベット語。
sogar 「金星」。サンスクリット語。
somiyaa 「月」。サンスクリット語。
suren 「守護」。チベット語。
tsebeg 「永遠の」。チベット語。
tseden 「長寿」。チベット語。
tseren 「長寿の」。チベット語。
tsoltem 「道徳」。チベット語。
yendon 「知識」。チベット語。

『モンゴル秘史 チンギス・カン物語』によるかつてのモンゴル人の名前と意味
男性
■ アチク・シルン(Ačiq Širun) テュルク語でアチク「苦い」、シルン「甘い」。
■ アラク(Alaγ) テュルク・モンゴル共通語で「ぶち(斑)」の意。特に犬の名前に使用。
■ アラクシ・ディギト・クリ・グレゲン(Alaquši Digid Quri Güregen) アラクシは「マダラ鳥(特にカササギ(鵲))、ディギト・クリは称号、グレゲンは「駙馬」の意。
■ アルタン・カン(Altan Qan) 「金の王」
■ アルディエル(Aldier) 「八つの地」。
■ イェケ・ニドン(Yeke Niddün) 「大きい目玉の持ち主」
■ イェスゲイ・バアトル(Yesügei Ba'atur) イェスゲイ「九」、バアトル「勇士」。
■ イナンチャ・カン(Inanča Qan) イナンチャはテュルク語の信頼から。「信頼王」。
■ オキン・バルカク(Ökin Barqaq) オキンは「娘」の意。丸顔で少女のように美しかったことから。
■ カチ・クルク(Qači Külüg) カチ「猛魚の一種」。クルク「駿馬」、「俊傑」。
■ カラウン(Qa'uran) 「やすり(鑢)」
■ ギルマウ(Girma'u) ギル「匂い」、マウ「悪い」。「悪臭」の意。
■ クイルダル(Quyildar) 「依頼人」
■ グウン・クア(Gü'ün U'a) グウンはウイグル語の「人々」から、クアは「黄味がかった白(モンゴル人の聖なる色)」。
■ クチュグル(Küčhügür) 「ノネズミ」
■ グチュルク・カン(Güčülüg Qan) 「力のある王」。
■ クドゥス(Qudus) 「禿げた」、「道化師」、「幇間」。
■ グユク(Güyük) 「走る」。küyük テュルク語「炎」か。
■ クルチャクス・ブイルク・カン(Qurčaqus Buyairuγ Qan) クルチャクスはCyriacus 「シリア人」の意の洗礼名。
■ コクセウ・サブラク(Kökse'u Sabraγ) コクセウ「喘息か肺病で声がかすれた人」、サブラクは、テュルク語で「用意する」。
■ コリチャル・メルゲン(Qoričar Mergen) コリチャルはバイカル湖東の民族「コリに似たもの」、メルゲンは「狩人」。
■ コリ・ブカ(Qori Buqa) コリは「コリ人」もしくは「20」、ブカは「牡牛」。
■ コルコスン(Qorqosun) 「羊やラクダなどの獣糞」
■ ジェベ(Jebe) 「矢のとがった先」、「矢尻」。本名のジルゴアダイ(Jirγo'adai)は「第六」の意。
■ シキケン・クドゥ(Šikiken Quduqu) 「小指」
■ ジャリン・ブカ(Ja'rin Buqa) ジャリンは「神告」、ブカは「牡牛」。
■ セン・ソチ(Sem Soči) セン「おし(唖)」、ソチ「座するもの(いざり(躄)のこと)」で「口がきけず歩けない」の意。
■ ソルカドゥ・ユルキ(Sorqadu Yürki) ソルカドゥは「あざ(痣)のある」の意。
■ ダイル・ウスン(Dayir Usun) 「黒褐色の河水」
■ ダリダイ・オッチギン(Daridai Otčigin) ダリダイ「瘡を持つ者」、テュルク語なら「黍を持つ者」、オッチギン「炉の主(末子につけられる)」。
■ チラウン・カイチ(Čila'un Qayiči) チラウン「石」、カイチ「ハサミ」。
■ チルギタイ・バアトル(Čirgitai Ba'atur) チルギタイは「ジュルキン人出身」、バアトルは「勇士」。
■ テムジン・ウゲ(Temüǰin Üge) テムジンは「鉄を作る人」、「鍛冶屋」、ウゲは古代アヴァール語で「賢者」。
■ ドア・ソコル(Dua Soqor) ドアは「トヴァ人(ウリャンハイ人)」を暗示か。ソコルは「盲人(「一つ目小僧のこと」)」で、「もぐら」の意味もある。
■ ドブン・メルゲン(Dobun Mergen) ドブンは「丘」、メルゲンは「猟人」で、「丘の猟人」。
■ トドエン・オッチギン(TÖdÖen Otčigin)トドエン「ズボンの紐」、オッチギン「炉の主(末子につけられる)」。
■ トドエン・ギルテ(TÖdÖen Girte)トドエン「ズボンの紐」、キルテ「汚い」。
■ トドエン・バルラ(TÖdÖen Barula)トドエン「ズボンの紐」、バルラはテュルク語 baruq 「たけだけしい」から。
■ トルイ(Tolui) 「鏡」はあやしい。テュルク語「身代金」か。「完全な」、「満ちている」の意も。
■ トロゴルジン・バヤン(Toroγolǰin Bayan) 「トロゴル人の長者」。
■ トンクイダイ(Tongquidai) 「ドンガイト人出身」。
■ ナチン・バアトル(Način Ba'atur) ナチン「小型の敏捷な鷹・隼」、バアトル「勇士」。 
■ ナヤア(Naya'a) 満州語で「妻方の兄弟、親族」の意。
■ バタチカン(Batačiqan) Batači はテュルク語で「牧人」の意で、「牧人の主」という意味。
■ バイ・シンコル・ドクシン(Bai Šingqor Doqšin) バイ「富める」、シンコル「タカ(鷹)」、ドクシン「たけだけしい」。
■ バトゥ(Batu) 「堅牢な」。
■ バラ(Bala) 「黒鉛」、「黒い跡」、「色のついた跡」。
■ バリン・シイラトゥ・カビチ(Barim Si'ratu Qabiči) バリン「捕える」、シイラトゥ「蹄のある」、カビチ「ヤマネコ」。「鳥獣を捕える蹄のある山猫」。
■ バルグタイ・メルゲン(Barγudai Mergen) 「バルグト人の長」
■ ブイルク・カン(Buyruγ Qan) 「命令する王」
■ フスン(Husun) 「水」、「川」。 
■ フメゲイ(Hümegei) 「臭い」
■ ブリ・ボコ(Büri BÖkÖ) ブリはテュルク語で「オオカミ」、ボコは力士。
■ ホルクダク(Horqudaγ) horγu- 「逃げる」からで、「いつも逃げる人」。
■ ボルジギタイ・メルゲン(Borǰigidai Mergen) 「ボルジギン人の長」
■ ボロルダイ・ソヤルビ(Boroldai Soyarbi) ボログダイは「ボロクチン(雛鳥)」の男性形。ソヤルビは不詳。
■ ムカリ(Muqali) 「奴隷」の意でカルムク方言に mohlä として残る。ぺリオによるとムカリは元来は南朝鮮人を指して北朝鮮人をソランガス(Solanγas)「イタチ」と呼称していたことに対応する。
■ ラブラカ(lablaqa) labla 「確かめる」。

女性
■ アラン・コア(Alan Qo'a) 「アラン姫」の意。ベルツスキーは、北イランのアラン人(オセット人)からとしている。
■ バルグジン・コア(Barγuǰin Qo'a) 「バルグト人の姫」
■ ボロクチン・コア(Boroqčin Qo'a) ボロクチンは「灰青色をした小さい鳥獣(特に雛鳥)」で、「雛鳥姫」の意。
■ ボルテ(BÖrte) 「蒼い」、「灰褐色」。
■ モンゴルジン・コア(Mongγolǰin Qo'a) 「モンゴル人の美姫」

力士の著名人の個人名
■ Amar-mend 「平安・健康」。星風芳宏 (ほしかぜ・よしひろ、1983年12月15日 - )
■ Bat-bayar 「安定・喜び」。旭鷲山昇(きょくしゅうざん・のぼる、1973年3月8日 - )
■ Byamba-dorj 「週末・金剛」。日馬富士公平(はるまふじ・こうへい、1984年4月14日 - )
■ Dagva-dorj 「清い・金剛」。チベット語起源。朝青龍明徳(あさしょうりゅう・あきのり、1980年9月27日 - )
■ Davaa-jargal 「月曜日・幸福」。白鵬翔(はくほう・しょう、1985年3月11日 - )
■ Enkh-bat 「平和・安定」。旭天山武(きょくてんざん・たけし 1973年8月4日 - )
■ Khuchit-baatar 「力持ちの・勇者」。時天空慶晃(ときてんくう・よしあき、1979年9月10日 -  2017年1月31日)
■ Tsebek-nyam 「永遠の・太陽」。旭天鵬勝(きょくてんほう・まさる、1974年9月13日 - )
■ Od-gerel 「星・光」。城ノ龍康充(しろのりゅう・やすまさ、1983年9月7日 - )
■ Sanchir-bold 「土星・鋼鉄」。龍皇昇(りゅうおう・のぼる、1983年3月11日 - )
■ Undrakh 「噴出する」。大勇武龍泉(だいゆうぶ・りゅうせん、1983年3月30日 - )
■ Unur-jargal 「家族の・幸福」。白馬毅(はくば・たけし、1983年5月5日 - )

モンゴル国の姓ランキング(2014年)

順位 姓 人口
1 Ganbold 21,597
2 Ganbaatar 20,358
3 Batbayar 17,519
4 Bayarsaikhan 15,215
5 Ganbat 14,576
6 Altangerel 14,305
7 Lkhagvasüren 13,815
8 Baatar 13,557
9 Batsaikhan 13,518
10 Dorj 13,247
11 Jargalsaikhan 13,228
12 Batjargal 13,066
13 Boldbaatar 12,279
14 Battulga 11,931
15 Batmönkh 11,879
16 Sükhbaatar 11,705
17 Batsükh 11,627
18 Ganzorig 11,615
19 Gankhuyag 11,589
20 Pürevdorj 11,479
21 Mönkhbat 11,169
22 Gantulga 10,898
23 Otgonbayar 10,873
24 Erdenebat 10,679
25 Batbold 10,485
26 Bold 10,466
27 Tserendorj 10,318
28 Nergüi 10,079
29 Tömörbaatar 9,827
30 Chuluunbaatar 9,537
31 Enkhbaatar 9,517
32 Gansükh 9,511
33 Pürevsüren 9,337
34 Enkhbayar 8,879
35 Batbaatar 8,788
36 Enkhbold 8,433
37 Purev 8,343
38 Enkhbat 8,311
39 Gantömör 8,266
40 Davaadorj 8,175
41 Davaa 8,040
42 Damdinsüren 8,033
43 Batchuluun 7,879
44 Baasanjav 7,827
45 Myagmar 7,743
46 Enkhtaivan 7,659
47 Davaasüren 7,588
48 Bayaraa 7,478
49 Byambasüren 7,362
50 Banzragch 7,285
50 Nyamdorj 7,285
52 Khürelbaatar 7,278
53 Mönkhbayar 7,266
54 Dorjsüren 7,124
55 Baterdene 6,969
56 Bat-Erdene 6,943
57 Baljinnyam 6,685
58 Badarch 6,620
59 Ochirbat 6,524
60 Byambajav 6,517
61 Byambaa 6,459
62 Otgonbaatar 6,433
63 Nyamsüren 6,278
64 Sambuu 6,253
65 Dashzeveg 6,175
66 Byambadorj 6,111
67 Batsuuri 5,981
68 Lkhagva 5,936
69 Mönkhjargal 5,911
70 Erdenebaatar 5,872
71 Bataa 5,859
72 Dashdorj 5,723
73 Myagmarsüren 5,717
74 Pürevjav 5,678
75 Natsagdorj 5,633
76 Gombo 5,588
77 Altankhuyag 5,581
78 Namsrai 5,562
79 Enkhjargal 5,517
80 Chuluunbat 5,459
81 Batkhuyag 5,427
81 Erdenebileg 5,427
83 Dashnyam 5,414
84 Lkhamsüren 5,407
85 Bayasgalan 5,394
86 Gombosüren 5,381
86 Uuganbayar 5,381
88 Chinbat 5,349
89 Damdin 5,298
90 Erdene 5,233
91 Mönkhbaatar 5,078
92 Batdorj 5,020
93 Lkhagvadorj 4,917
94 Ankhbayar 4,897
95 Jargal 4,872
96 Tsend 4,833
97 Lkhagvajav 4,762
98 Davaajav 4,736
99 Galbadrakh 4,730
100 Sharav 4,717

出典
http://forebears.co.uk/mongolia#surnames
本来の出典は不明。

参考
『世界の言語ガイドブック2 アジア・アフリカ地域』(東京外国語大学語学研究所編、三省堂、1998)
『モンゴル秘史 チンギス・カン物語』(村上正二(訳注)、平凡社、1970年~1976年)
Mongolian name
https://en.wikipedia.org/wiki/Mongolian_name